「Wake Up,Best! MEMORIAL」に収録されている4曲の新曲の話。
※この記事はネタバレを含みます。まだ聴いていない方は一度聴いてから読むことをオススメします。
こんばんは。
そういえば2019年初更新でした。あけましておめでとうございます(遅)
さて、2019/1/23に声優ユニットWake Up,Girls!の集大成であるアルバム「Wake Up,Best! MEMORIAL」が発売されました。
3月いっぱいで解散する彼女たちの最後のCDになるのですが、僕も世にいう「ワグナー」なのでもちろん予約しており、無事23日に受け取ることができました。
早速聴いたところ、これがあまりに素晴らしすぎました。
このアルバムは8枚組のCDで、7枚目までは既存の楽曲を収録、8枚目に新曲4曲とそのインスト版が収録されています。
既存の楽曲も勿論素晴らしくこれだけでも原稿用紙10枚は余裕で語れるんですが、それはいずれ機会があれば…ということで今回は新曲4曲にスポットを当てて思ったことを書き連ねたいと思います。
まず、この4曲についての概要を簡単に説明すると、作編曲を高橋邦幸、広川恵一、田中秀和、神前暁というMONACAの4名がそれぞれ担当しており、作詞は全曲只野菜摘となっています。
WUGのことを知っている方は一度は見たことのある名前であり、これまでのWUGを支えてきたと言っても過言ではない方々です。
そんな方々が作る4曲はWUGへの理解・愛情が詰め込まれていて、集大成を飾るにふさわしい楽曲たちだなぁと思いました。
それではここからは1曲ずつ個別の感想を書いていきたいと思います。
・海そしてシャッター通り 作詞:只野菜摘 作・編曲:高橋邦幸(MONACA)
まずは高橋さんの楽曲。
WUGで高橋さんといえば劇伴のイメージが強く、歌モノは「あぁ光塚歌劇団」「プラチナ・サンライズ」「ワグ・ズーズー」の3曲しかありません。
しかもその2曲も雰囲気が全く異なるので発売前から「どういう楽曲になるんだろう」と期待していました。
出だしの「♪北風吹く~」のメロディで「これは確かに高橋さんっぽい」と思っていたところにピアノ、ストリングスが入ってきて「なるほど」となります。
これは劇伴でよく聴いていた高橋さんの音楽に近い……と思ったのですが途中で「いや違う!?」と気付きました。
これ、劇伴のフレーズそのものじゃね…?
そして1番終わりのフルートで確信しました。
「Wake Up,Girls!新章の劇伴(Wake Up,Best! 3に収録)の『小さな一歩』だ」、と。
なるほど劇伴で貢献してきた高橋さんがここでそれを活かしてくる、これは一本どころか二本も三本も取られたなと思いましたね。
話は少し逸れますが、「オタクは文脈に弱い」という僕の持論がありまして。
「過去にこういうことがあった、それを踏まえて今を見るとまた違う意味が出てくる」という構成に弱いのは全オタクに言えることではないかと思います。
この曲の話に戻すと、「過去にあった劇伴を最後の曲に入れてくる」ということに感動を覚えるわけです。
更にそこに加えて歌詞がまた素晴らしいんですよね。
「♪ひたすら歩く 懐かしい 愛おしい 私の街」
この「私の街」が指す街は、WUGの文脈を踏まえれば東北地方という解釈ができます(もちろんそれだけの意味ではないとは思いますが)。
そしてそう捉えると「海そしてシャッター通り」という曲名も重い意味を持っているように感じます。
WUGと東北地方、もっと言えば仙台とは切っても切れない関係であり、それを改めて認識させてくれました。
最後のサビ「♪フードの~」からの合唱、「言の葉 青葉」を思いだしてグッときます。
そして最後の「♪そっと眠って」からアウトロで優しく終わる、なんだか原点というか、実家(HOME)に帰ってきたかのような気持ちになりました。
楽曲的にもかなり趣向が凝らされており、1曲目からいろいろと考えさせられてしまいましたね。
・言葉の結晶 作詞:只野菜摘 作・編曲:広川恵一(MONACA)
続いて広川さんの楽曲。
こちらは発売前にFINAL TOURの熊本公演で初披露され、その後大阪公演でも披露されていました。
更に試聴動画もYouTubeにアップされていたので、ある程度の情報は知っている状態で発売を迎えた方も多いかと思います。
かくいう僕(よぴ推し)も熊本公演に参加しまして、この曲の初披露に立ち会うことができました。
熊本昼公演では誰が作ったかを公開する前の披露で、直前のMCで「誰が作ったか当ててね(意訳)」と言われたので真剣に当てにいったんですが、歌いだし1秒で「あっ広川恵一だ」となったぐらいには個性丸出しですよね(後で近くに居たワグナーに「反応が早過ぎるw」とツイートのネタにされていた)。
さて、この曲を聴くと広川さんは「音をどこまで削れるか」ということに挑戦しているように感じます。
それを裏付けるかのような広川さんのツイートを1つ紹介させていただきます。
必要な音さえ鳴ってればトラック数なんて少なくていいんだよ! っていうアレンジの仕方がマイブーム。
— 広川恵一(MONACA) (@HirokawaKeiichi) January 9, 2018
まさしくこの楽曲は必要最小限の音だけが鳴っていると思います。
2:29辺りの完全な無音(「無音」ではなく「休符が鳴っている」と言った方が正しい)、実際は2秒程なのにライブで聴いた時は10秒程に感じたのは、その美しさに息を飲んだからかもしれません。
そしてこの曲は拍子がややこしいですね。
(以下自信のない考察です、間違っているかもしれません)
3+3+2とか4/4とか3+4とかを行ったり来たりしているのかな?と思います。
「♪私もいつかは~」と「♪最後に感謝を~」では拍子が違うように聞こえます(3+4→3+3+2っぽい?)。
広川さんはこういう変拍子の曲を書いた前例(アイマスの「CRIMSON LOVERS」とか)があるので実際そうでもおかしくはなさそう。
「♪存在だけで 美しいもの」の部分はメンバーが1文字ずつ歌っていくのですが、ここの「7」拍子を狙ってやってるのだとしたら、相当な策士ですよ……。
そしてまた只野さんの歌詞が良い。
「♪哀しい 苦しい 説明ならなくていい
泣いても 呼んでも 夕暮れだけ残った」
この歌詞を解散するユニットに歌わせる重さ、これで刺さらない訳がないんですよね。
「♪最後まで演奏を続ける この船
強さが あなたに届くと信じる」
まさにこれ。彼女たちの最後の雄姿、見届ける必要があるなぁという気持ちになります。
そして最後の歌詞、
「♪輝きだけが 言葉の絶唱」
最早語る必要もないですかね。
あの歌い方でこの歌詞を歌われたら……
・土曜日のフライト 作詞:只野菜摘 作編曲:田中秀和(MONACA)
3曲目は田中さんの楽曲。
これも「言葉の結晶」と同様に大阪公演で披露されており、試聴動画も公開されていました。
僕は諸事情で大阪公演に参加できなかったのでCDで初めてフルを聴くことになったのですが、これまた素晴らしいですね。
既にTwitter等で多くの方が言及している通り、80~90`sのシティポップをなぞらえているのかなと思いましたが、それだけで終わらないのがやはり田中さんの真骨頂でした。
同じフレーズをそのまま繰り返す、ということをせず少しずつ変えてくるのは田中さんの常套手段であり、この曲でも随所にそれが表れています。
1番ではBメロからサビにすっと入るのに2番はBメロからサビに入らず間奏→サビと展開し、そのままBメロ前半に繋いで2回繰り返し(かつ1回目と2回目で変化する)からのBメロ後半(ここも今までと変わる)、そしてラスサビ×2(もちろんここも変わる)という怒涛の展開になっています。
MONACAの方々は数々のWUGの代表曲を作っていてもちろんWUGメンバーの歌唱力についてはご存じなはずです。
その上で広川さんも田中さんもこれだけ歌うのが難しそうな曲をWUGに提供していることを考えると、WUGとMONACAの信頼関係ってものすごくあるんだなぁと痛感します。
この曲の話に戻ると、Bメロ後半でコードが白玉ジャーンで次々変わっていくのが心地よいです。
「♪気持ちが」のところが#Ⅳm7-5 Ⅶ7のツーファイブで、これ自体は特別珍しい訳でもないコード進行なんですが何故か特別エモく感じてしまうのはなんなんでしょうか……
それからサビの歌詞。
「♪土曜日のフライト チケットとプライド
信じて行かないと 証明をしないと」
メッセージ性もあるし韻の踏み方も気持ちいい、お手本のような歌詞だと思います。
「♪忘れないで でも上手に忘れて
悔しい怖い泣きたい もうそのレベルじゃない」
ここが一番印象的な方も多そうです。
解散を控えたユニットにこんな歌詞を歌われて泣かないとか無理じゃないですか?
何なら僕は今もこれを書きながら泣いてます。
そして「土曜日のフライト」というタイトルなんですが、解散が発表されたのは6/15の金曜日、そしてファイナルライブは3/8の金曜日。
このタイトルには「解散後にそれぞれの道へ羽ばたくWUG」という意味が込められているように思えてなりません。
羽ばたいていってほしい、よなぁ…
・さようならのパレード 作詞:只野菜摘 作・編曲:神前暁(MONACA)
最後は神前さんの楽曲。
WUGの始まりの楽曲「タチアガレ!」も神前さん、最後の楽曲も神前さん、その時点で既にエモさが限界なのに…この曲名…限界突破ですやんか…
神前さんの大団円楽曲が僕は大好き(アイマス「M@STERPIECE」とか、アニサマ2018テーマ「Stand by...MUSIC!!!」とか。)で、この曲も例に漏れず大好きなのですが、それだけでなく更にイントロから前述の「オタクは文脈に弱い」を証明するかのように「文脈」が埋め込まれているんですよね。
・イントロが「タチアガレ!」のイントロのピアノのフレーズ引用
・サビ前に「タチアガレ!」のサビ「♪Wake Up!」のメロディが鳴っている(インストで聴くと特に分かりやすい)
ちゃんと採譜はしていませんが、多分サビのコード進行もタチアガレ!に似せてありますね。
歌詞の方でも
・「♪極上の笑顔」(極上スマイル)
・「♪大きな想いの鞄」(16歳のアガペー「♪バッグの方は~」か?)
・「♪旅人を癒す」(スキノスキル「♪一緒に居たい 癒していたい」か?)
などなど、「文脈」そのものではなくとも連想するものが埋め込まれていたりします。
そして、これ以外の「文脈」の中で特筆したいことが僕には2つありまして。
1つ目は2番Aメロ「♪私の歌はあかぬけなくて重たい」「♪ぶつかってくれた声と同じくらいにね」の歌詞とパート割。
僕の耳が間違っていなければ前者がよぴ、後者がまゆのはず。
青山吉能の歌、それから結成当初青山吉能と吉岡茉祐がケンカしたこと、それを経て今があること、そして今この歌詞を歌うこと。それってめちゃくちゃ意味があることじゃないですか。これこそWUGの究極の「文脈」だと思うんですよね。
故に、この歌詞を書いてくれた只野さんには感謝しかできません、という結論に至るんですよね。
もう1つはラスサビ終わってから。歌詞カードに書いていない「♪Wake Up!」の歌。
歌詞カードに書いてある歌詞が終わって「これで終わりか…」という気持ちになってからその歌声を聴いた瞬間の震え、涙。
最初と最後が輪で繋がったような、また帰ってきたかのような何とも言えない感情。
きっと何年経ってもここを聴くたびWUGの歴史を思い返すことになるんだろうな、と思います。
そして一番印象的な歌詞。
「♪さようならはいやだよ
慣れることなんかない
だけど背中 押すみたいに
あなたのリズムが聴こえてる」
僕の大好きな曲にUNISON SQUARE GARDENの「シャンデリア・ワルツ」という曲があるのですが、この曲にこんな歌詞があります。
「♪ハローグッバイ ハローグッバイ
何度も繰り返す 死んじゃうまできっと
悲しい事でも何でもない
その度に君は大人になる」
と。
さようならはいやだし、慣れることもないし、でもそれって生きていたら何度も繰り返すことで、避けられないことなんですよね。
でもその度に大人になるのが真実だとしたら、彼女たちの背中を押してあげるのが「あなた」が出来ることなんじゃないでしょうか。
3/8のファイナル、何とかして見届けてあげたいですね。
以上、僕が思うことをつらつらと書き連ねました。
長くなりましたがここまで読んでくださった方、お付き合いありがとうございました。
「♪また会いたいんだ」
また「Wake Up,Girls!」に、会えるといいな。