青山吉能1stアルバム『la valigia』全曲レビュー 〜「旅」とは〜
みなさん元気ですか?
わたしは元気です。
青山吉能です(違います)。
冗談はさておき、3/8に青山吉能さんの1stアルバムが発売になりました。
青山吉能さんと言えば昨年『ウマ娘』や『ぼっち・ざ・ろっく!』などの出演などもあり、今やすっかり大人気声優の一人です。
僕が彼女の存在を知ったのは2016年頃、正確な時期は覚えていないのですが、楽曲を漁っていて「Wake Up, Girls!」という声優ユニットを知った時でした。
最初の頃は見た目と歌声しか知らなかったので「歌は上手いけど推しになるタイプじゃないなぁ」と思っていました。
しかしそこからWUG関連の動画や生放送を見るにつれ、次第に「あれ?もしかしてこの人好きかも」と思い始め、気付いたらめちゃくちゃ好きになっていました。人を見た目で判断してはいけませんね。
そんな彼女と出逢わせてくれた声優ユニットWake Up, Girls!は、2019年3月を以て声優ユニットとしての活動を終了しました。
ちなみにファイナルライブ当日の話は当時の僕が記事を書いているので、良かったら読んでみてください。
この時、Wake Up, Girls!というユニットのことが好きだったので活動終了はもちろん悲しかったのですが、それはそれとして青山吉能という人間のことも好きになっていたので、ユニット活動が終了したからと言って追いかけるのをやめたりはしないだろうな、とも思っていました。
そんな中2021年末にはライブ、2022年にはアーティストデビューが決まった時には本当に嬉しかったです。
やはり青山吉能という人間を語る上で「歌」は外せないものだと思っているので、それを表現する場があること、そして彼女がそれを選んだことに感謝でいっぱいでした。
そんなデビューから1年、いよいよ1stアルバム『la valigia』の発売を迎えました。
ちなみに『la valigia』はフランス語で「スーツケース」という意味だそうですが、個人的には既にこの時点でグッと来てしまいます(詳細は後述)。
というわけで今回は『la valigia』の全曲レビューをしていきたいと思います。
色々入り混じって長くなるかもしれませんが、オタクの御託にお付き合いいただければと思います。
1. Sunday
作詞・作曲・編曲:馬瀬みさき
早速ですが語らせてください。
WUGの解散が決まってから発表された新曲が4曲あり、その中に『土曜日のフライト』という楽曲があります。
過去の記事でも何度も触れている、僕の大好きな楽曲の1つです。
この『土曜日のフライト』がファイナルライブで歌唱されてから丁度4年後に発売された『la valigia』の1曲目が『Sunday』というところに、どうしようもなく文脈を感じてしまうのです。
オタクは文脈で生かされている。
『土曜日のフライト』の青山吉能さん歌唱パートには
忘れないで でも上手に忘れて
という一節があります。
一方『Sunday』には
素敵なSunday
今日からは新しくはじまる朝
という一節があります。
過去のことは事実として自分の中で咀嚼した上で、それでも前向きに未来を向くことが「上手に忘れる」ことなのかな、とこの曲を聴いた時に思いました。
楽曲の話をすると、うねるベース+ギターのカッティング+ブラスのアンサンブルが心地良く鳴っていて、アルバムの1曲目を飾るに相応しいポップな楽曲に仕上がっています。
あと「Sunday」の"ン"の歌い方が青山吉能さんの特徴的な歌い方で好きなんですが、これって合唱経験者なのは関係あるんでしょうか。あまり詳しくなくて申し訳ないですが有識者がいれば教えてください。
2. あやめ色の夏に
作詞・作曲・編曲:永塚健登
こちらは2ndシングルです。
ストリングス、ピアノ、アコギなどのサウンドがノスタルジックで、存在しない夏の記憶を生み出すような楽曲になっています。
個人的に既存曲では一番好きで、特にお気に入りポイントは2番のBメロ終わりでそのままサビに行かず間奏→サビへと進んでいくところ。
聴くたび永塚健登さんありがとうの舞を踊っています。
ちなみにこれは完全に余談ですが、過去の記事で2021年の10曲の中に永塚健登さん作詞・作曲の亜咲花『Seize The Day』を挙げています。
思わずクネクネ踊り出してしまいます。
2年前も永塚健登さんありがとうの舞を踊っていました。
3. moshi moshi
ここまでの2曲とは打って変わってシンセサウンドです。
電話の着信音のような音が入っていたり、どちらかというと飛び道具的な立ち位置の楽曲なのかなと思いました。
こういう曲があるのもアルバムの醍醐味ですよね。
曲中にはセリフ調で歌われる箇所が多くありますが、このギミックは声優アーティストならではと感じると同時に、歌唱部分でも機械的に感じるよう淡々と歌う青山吉能さんの表現の幅広さは流石だなぁと思いました。
ちなみに作編曲の宮原康平さんは、以前アニメ『灼熱の卓球娘』で由良木ゆら(CV:青山吉能)が参加しているキャラクターソング『サプライジング★ルーキー』の作編曲も担当されていました。文脈。
4. Mandala
作詞・作曲:矢吹香那 編曲:前口ワタル
いや〜〜〜〜〜〜最高です。
やはり青山吉能さんの歌声と90年代ポップス調の楽曲の相性は抜群ですね。
↑前例。
聴いていると無限にカッティングの振りコピ(?)するおじさんになってしまうのですが、歌詞カードの写真もそんな感じでとてもGoodです(どういうことか気になる人はCD買って自分で確認してください)。
5. My Tale
作詞:タイラヨオ 作曲・編曲:hisakuni
3rdシングルです。
1st、2ndとは違い打ち込みメインの楽曲となっています。
MVの影響もあって夜のイメージが強いです。
この曲を聴いていると「本当に自分がやりたいことが出来ているんだな」と感じますね。
シングルで出た時はあまり聴けてなかったので今回改めて聴き直していたんですが、ストリングスかっこいいですね。特に1番とラスサビの前半1回目と2回目の間(「♪喧騒と静寂」の前)、2番のサビ前(「♪明確と曖昧」の前)に注目して聴いてみてください。
6. ツギハギ
作詞・作曲・編曲:トミタカズキ
ピアノと歌始まりのバラード真っ向勝負な楽曲です。
正直なところ、僕はバラードというのがあまり好きな方ではないです。
曲によってはある種の「押し付けがましさ」みたいなものを感じてしまい、その瞬間に敬遠してしまうことがしばしばあります。
しかしこの曲に関してはそんなことは無く、スッと耳に入ってきました。
それはやはり青山吉能さんの歌の力が大きいと思います。
優しい歌い出しから始まり、曲が進むに連れて変化していく感情を表現した歌になっていて、特に最初と最後で歌の表情の違いに注目して聴くと、その変化が分かりやすく感じ取れると思います。
7. Sweetly Lullaby
作詞・作曲・編曲:馬瀬みさき
はい、好きです。
オシャレなコード、ブラス、ピアノ、そして間奏にはスキャットなんかも入って上質なシティポップに仕上がっています。
歌も良い意味で肩に力が入ってない感じで、「こういう歌い方も出来るのか」とここでも青山吉能さんの表現の幅広さに感心してしまいました。
それにしても『Sunday』に続き、馬瀬みさきさん素晴らしすぎます・・・
今後の活動でもこういう曲があると個人的には嬉しいですね。
8. STEP&CLAP
作詞・作曲・編曲:小幡康裕
陽気なハネのリズムで思わず踊り出したくなる楽曲。
過去も未来も今はそっと
忘れてしまえばいいの
という歌詞の通り、とにかく今を楽しもう!という気持ちが前面に出ています。
インタビューや配信でも「ライブ映えを意識して作られた曲」と語られていたので、ライブで聴ける日が来るのが楽しみですね。
9. 透明人間
作詞・作曲:ヒグチアイ 編曲:木原良輔
無事感情破壊されました。
作詞・作曲のヒグチアイさんについては最早説明不要かと思いますが、直近だと自身名義でのアニメ『進撃の巨人 The Final Season Part 2』のED『悪魔の子』や、青山吉能さん関連で言うと『ぼっち・ざ・ろっく!』の『青春コンプレックス』『ひとりぼっち東京』『あのバンド』『星座になれたら』の作詞などで話題になりました。
この曲についてですが、歌詞全編に渡って「青山吉能」という人間に対する解釈が完全一致なんですよね。
引用して語り出したら全編語ることになってしまうので出来ませんが、これぞ青山吉能!と言わんばかりの歌詞になっていて、プロのクリエイターは本当にすごいと言わざるを得ません。
青山吉能の歌を一言で表すなら「魂」だと言われることがありますが、そんな歌詞だからこそ特にこの曲の歌唱には魂がこもっていて、こちらの感情も大きく揺さぶられるんですよね。
そんな彼女の魅力がギュッと詰まった楽曲だと思いました。
10. Page
最後を飾るのはデビューシングルです。
この曲はアルバム内で唯一本人のみの作詞となっていますが、あまりにも青山吉能を体現している前曲『透明人間』からの本人作詞という流れが綺麗で、曲順の妙を感じます。
今更語ることもないかな、とも思うのですが本当に良い曲ですね・・・。
リリース当時から青山吉能のアーティスト活動を進めていくに当たって解釈一致な楽曲だと思いましたし、デビューから1年、こうしてアルバムが発売されてもその気持ちは変わりませんでした。
それは本人がやりたいことをやれる環境にあること、そしてそれを見たいというこちらの気持ちも変わっていないことの証明でもあると思うのですが、それってとても良い形のアーティスト活動なのでは?と思いますね。
ex. たび
作詞:青山吉能 作曲:Noda Akiko 編曲:木原良輔
この曲は元々デビュー前のライブのために作られたという背景がある特別な曲なので、パッケージ版ボーナストラックとなっています。
作曲のNoda Akikoさんは『続・劇場版 Wake Up, Girls! Beyond the Bottom』にも関わっていた他、前述の『サプライジング★ルーキー』にもコーラスで参加されています。文脈。
と、ここまで書いておいて何ですが、この曲について語るのは野暮な気がしてきました。
皆さんには是非パッケージを手に取って、青山吉能さんの歌を、歌詞を、噛み締めてほしいと思います。
特にWUG時代から彼女を知る人には、刺さる箇所も多いんじゃないかと。
長々と書いてきましたが以上になります。
で、結局のところ何が言いたかったかというと「青山吉能さんの歌を聞いてください」の一言です。
少しでも青山吉能という存在に触れた人、とにかく聞いてください。
この記事を書くにあたって、「旅」という単語について少し考えてみました。
「旅」の類義語に「旅行」という単語があります。
この2つの単語はほとんど同じ意味ですが、ニュアンスの部分に違いがあるように感じます。
「旅行」は目的地があって、そこに向かうイメージ。英語だと"Travel"と訳すのがしっくりきます。
それに対して「旅」は目的地はなく、どちらかというと「旅」そのものが目的のイメージ。英語だと"Journey"と訳すのがしっくりきます。
このアルバムのテーマになっている「旅」は後者の方で、「旅」そのものが重要な意味を持ちます。
ここに至るまでの道のり、出会った人、見た景色、過ごした時間。その全てが「旅」なのだと思います。
だから青山吉能は「未だ旅の途中」だし、その途中で偶然出会った僕たちに「旅」の一部を見せてくれているんだと。そんな風に解釈しています。
彼女がこれからどんな景色を見せてくれるのか、楽しみになってきたところで今回はここまでです。
お付き合いいただきありがとうございました。
それでは〜。