音楽は今日も息をする。

あんでぃの音楽関連の記事を書くブログ。MONACAと田淵智也多め。

鹿乃『yuanfen』というアルバムの素晴らしさを語りたい。

皆さんお久しぶりです。

毎回「お久しぶり」って言ってる気がしますが、それもそのはずで今回なんと2020年初めての更新です。

まあこのブログに更新頻度を期待している人なんていないと思うので、今後もマイペースに更新していきたいと思っています。

 

 

前置きはこのぐらいにして本題に入ります。

今回は鹿乃さんのアルバム『yuanfen』について語っていきたいと思います。

 

yuanfen(初回限定盤)

yuanfen(初回限定盤)

  • アーティスト:鹿乃
  • 発売日: 2020/03/04
  • メディア: CD
 

 

このアルバムは僕が大ファンである作曲家の田中秀和さんがサウンドプロデュースしているということで「これは要チェックだ!」と思っていました。

田中さんは過去にも鹿乃さんに楽曲を提供しているんですが、その中でも『Linaria Girl』という曲が僕は大好きで、そういう意味でも非常に期待値は高かったです。

 

で、いざCDを購入して聴いてみたらその期待値を軽々と超える素晴らしい仕上がりで、「この感想を共有せずにはいられない!」と思い記事を書くことにしたわけです。

そこで1曲目から順番に感想を述べていきたいんですが、Twitterのフォロワーさんがこのアルバムに関してとても素晴らしい記事を書かれていまして、それがこちら。

letia-musiclover.hatenablog.com

この記事の内容も踏まえて被らないよう(ダジャレじゃないよ)心掛けながら述べていこうと思いますので、よろしくお願いします。

 


※全曲 作詞:鹿乃 作曲:田中秀和

1.午前0時の無力な神様 編曲:Aire


鹿乃「午前0時の無力な神様」【OFFICIAL】

アルバムのリード曲で、発売前にMVが公開されていたので曲自体は事前に聴くことができました。

田中さんとAireさんの組み合わせは鹿乃さんの『CAFUNÉ』と同じで、今作が2度目ですね。

CAFUNE

CAFUNE

  • provided courtesy of iTunes

 

Aireさんは田中秀和限界オタク(鹿乃さんの証言)なのですが、この曲の編曲にもそれが出てるなぁと思っていて。

どういうことかというと、Aireさんの編曲が「自分のカラーも出しつつちゃんと田中さんっぽさが感じられる」絶妙なバランスで成り立ってるんですよね。

これは「限界オタク」と言われるほどに田中さんのことを好きで、なおかつ理解しているAireさんだからこそできる編曲だと思います。

田中さんがそこまで見越して編曲を依頼したのかは分かりませんが、少なくとも僕はこの形で世に出てくれて本当に良かったと思います。

 

個人的に好きなのは2Bから間奏のギターソロに入った後、コーラスが重なってきて「♪Uh~」から「♪愛おしくて」、そしてサビに繋がっていく一連の流れ。美しすぎる。

 

 

2.光れ 編曲:Nor

NorさんらしいバキバキのFuture Bassサウンドがかっこいいです。

田中さん含め8人のアレンジャーが編曲で参加しているのがこのアルバムの特徴のひとつで、聞き方としても「色んなアレンジャーのアレンジの違いを楽しむ」というのがあると思いますが、この曲は特にアレンジャーのカラーが強く出ている印象があります。

 

あと印象的なのはサビの「♪精一杯輝いて 大丈夫伝えよう」のメロディ。

鹿乃さんの歌い方も相まってキュッとさせられてしまいます。

 

 

3.yours 編曲:田中秀和(MONACA)

ここで前2曲とは雰囲気がガラッと変わります。

『Linaria Girl』的なブラジル要素を含みつつも、マイナー調の暗さ・切なさ・かっこよさみたいなものが感じられますね。

特に2番の「♪あたし今日も あなたの友達」のダークさを帯びた歌からの間奏へ繋がっていくところが本当にすごい。

ていうか間奏おかしいでしょ。バグ?

入りのベースがかっこよすぎるし、かと思ったらいきなりいかつい変拍子がやってくるし……とにかく凄まじい。でもめちゃくちゃかっこいい。

 

曲の終わり、メジャーコード(EbM7かな?)に行ったところで「最後だけは明るく終わるのか?」と思ったら見事に裏切られて「やられた~~~!!!」と声が出ました。

 

 

M4.KILIG 編曲:ハヤシベトモノリ

「KILIG」とは「お腹の中に蝶が舞うようなロマンチックな気持ち」という意味のタガログ語らしいです。

 

イントロのレトロなブラスの音が印象的だなぁ~と思っていたらKawaii Future bass的な音作りになったり、サビではギターがギャンギャンに鳴っていたり、とにかくいろんな音が鳴っているんですがそれを1曲に纏め上げているのがすごいなぁと思います。

最後のサビ2回し目「♪元には戻れない」でコードが泣かせに来るのめっちゃいいですね…。

 

ちなみに記事内で曲について書く時はその曲を1曲ループしながら書いているんですが、この曲はループがあまりに自然に繋がるので無限に聴いていられるような気分になりますね。

 

 

5.聴いて 編曲:田中秀和(MONACA)

初聴イントロの段階で「あ、この曲好きかも」と思ったのがこの曲。

優しいバラードかと思ったらドラムが急に激しくなってちょっとびっくりしましたが、僕にはその激しさが感情の起伏を表しているようにも聴こえました。

あと、鹿乃さんの感情が伝わってくるような歌い方は他の曲でも何度も登場していて鹿乃さんの歌の良いところだと勝手に思っているのですが、この曲は特に上手くマッチしている気がします。中でもラスサビは印象的ですね。

 

「♪ずっと ずっと ずっと ずっと」のところ、裏のベースが気持ち悪くて気持ちいい(語彙)

 

 

6.漫ろ雨 編曲:曽我淳一

編曲の曽我淳一さんは「トルネード竜巻」というバンド(現在は活動休止中)のキーボード担当で、現在はライブサポートやレコーディングなど幅広く音楽のお仕事をされている方です。

更に田中さんは「トルネード竜巻」のファンである、というのも知っているとまた違う面白さが見つかりますよね。

 

それはさておき、僕が「このアルバムで一番好きな曲は?」と聞かれたら恐らくこれを挙げると思います。

理由としては「僕が元々好きな物憂げなテイストを持った邦楽ロックに近い香りを感じたから」というのが大きいかもしれません。

コード的にも動きの少ないAメロ、少し動き出したBメロ、そして爆発するサビという流れが本当に良すぎる……もっと言うとこの曲に「漫ろ雨」というタイトルはドンピシャすぎるし、歌詞の世界観もめちゃくちゃ好みで……全てが好きです。最高。

 

そしてこれは完全なる余談ですが、曽我淳一さんはTHE BACK HORNNICO Touches the Walls(どちらも好きなバンド)にも携わっていると知って「そういう接点もあるのか!」ととても驚きました……。こういう接点を見つけた瞬間がオタクやってて一番楽しい瞬間です。

 

 

7.おかえり 編曲:Oliver Good(MONACA)

底抜けに明るいサウンドが印象的な曲です。

編曲はMONACAの新進気鋭Oliver Goodさんで、河野万里奈『MARINARING』でも感じましたが本当に心地よい編曲をしてくれる人です。まさにGood。

でもただずっと明るいままで終わるんじゃなくて、最後の最後「♪さようなら またね」だけサウンドも歌詞も切なくなるのが泣かせに来てるなぁって感じです。

 

Oliver Goodさん、個人的にはとても注目しているのでこれからガンガン曲を提供してほしい。

 

 

8.罰と罰 編曲:佐高陵平(Hifumi,inc.)

このアルバムの中で一番ヤバい曲。

初聴のイントロの段階で「あ、今からヤバいことが始まるな」と感じてしまいました。

編曲の佐高陵平さんはy0c1e名義でも活動されていて、有名どころだとアニメ『ブレンド・S』のOP『ぼなぺてぃーと♡S』などの作品があります。

僕もその辺の知識は多少あったんですが、その中でもこんな尖った曲が来るとは思わなくてびっくりしました。

 

今回の9曲の中でこの曲は特に異質な印象を受けますが、鹿乃さんの歌い方が妖しくダークで曲調と合ってるんですよね。この化学反応を魅せるためにこの編曲にしたんだとしたら佐高さんがすごすぎる。

 

いや、ほんとすごすぎてこれ以上書けることがないんですよ…

 

 

9.エンディングノート 編曲:sugarbeans

アルバムの最後を飾るにふさわしい名曲ですね。

sugarbeansさんは田中さんの楽曲に頻繁に携わっている方なのでそんな信頼関係もあるんでしょうね。

個人的にはピアノが映える曲は好きなのでこの曲も好きです(小学生並みの感想)。

 

実はこの曲に関してどうしても語りたかったことがあります。

タイトルにもなっている「エンディングノート」というのは「自分の人生の終わり、死後に向けて希望を書き記したノート」のことで、この曲の底には「死」があるんですよ。

realsound.jp

このインタビュー内で鹿乃さんは以下のように語っています。

そこから、「エンディングノートということは、本当にみんなへの気持ちを書くものになるよなぁ。そのとき、自分はどんな歌を歌いたいだろう?」と考えていたら、シンプルに「ありがとう」と伝えたいという気持ちになりました。 

言葉の通り、サビで繰り返し「ありがとう」と歌われていますし、曲調も重苦しさというよりは前向きな明るさを感じますよね。

 

その一方で田中さんは以下のように語っています。

実はこのレコーディング中は、僕らの間で、「死」というものへの気持ちが共有できている時期だったんです。それは、レコーディングの現場では言葉としては出なかったんですが、「死」というものに対する身近さや、「僕らにもいつそれが訪れるかわからない」、だからこそ「今何を伝えたいのか?」という思いのようなものが、かかわってくれた方々全員で共有できていたように思います。

僕もこの文章が意味することが理解できるような気がしているんですよね。

「死」というものは思ったよりはるかに身近にあって、昨日まで元気だった人が突然亡くなることもあります。

 

そんな中でこの曲が覚悟を持って世に出されたことで、救われる人間はきっとたくさんいるはずです。

もちろん僕もそのうちの1人なので、「この曲をずっと大切にしていきたい」と思っています。

 

 


ここまで全曲感想を述べてきましたが、最後にアルバム全体を通した感想を述べてこの記事を締めたいと思います。

 

まず、このアルバムは「作詞:鹿乃」と「作曲:田中秀和」が2本の大きな軸になっていると思っていて。

その中で携わるアレンジャーが各々の個性を出した結果、バラエティーに富みつつも纏まりがあるんですよね。

 

僕は「アルバム」というのは「音楽だけではなくて、CDそのものとかジャケットとか歌詞カードとか、そういうのも全部ひっくるめてひとつの作品」だと思っているんですが、この『yuanfen』というアルバムはその点でも非常に満足できる作品でした。

今はサブスクで気軽に音楽が聴ける時代ですが、そんな時代だからこそCDを買うことに意味が感じられるのはとても素敵なことだと思います。

アルバムタイトル『yuanfen』には「縁、ゆかり。運命の糸で繋がれた仲。」という意味があるそうですが、僕にとってはこのアルバムに出会えたことこそ「縁」ですし、いろいろなことに感謝しないといけないなぁと思いました。

 

 

というわけで今回の記事はこれで終わりです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。